なんだか無性に
高校の時に知り合い、
大学から付き合いはじめ、
社会人になっても当たり前のように
付き合ってきた彼女がいる。
家族のような存在になってしまった彼女に
僕はどこか迷いを感じていた。
新しい世界もあるはずだなんて思いもした。
節分の日。
彼女が急にやってきて、
アパートに豆をまいてくれた。
にこにこしながら、福は内!鬼は外!
なんだか悩む自分が馬鹿らしくなった。
なんだか無性に結婚してもいい気がした。
さぁて、いつ話そうか。
・・・というショートストーリーを、
親友の話を聞いて、書いたことがある。
もう10年近く前のことだ。
二十代の前半、比較的はやくに結婚した
親友の体験談に少なからず憧れを抱いていた。
「#MarryMeを訳してみたら」
お題を頂いて真っ先に思い出したのが、
さきほどのショートストーリーだった。
そして自分は、どう話したかというと―
言葉の伝え方の可能性を探る、
コピーライターという仕事をしているけど、
言葉にするべきことは、こねくりまわさず、
まっすぐ言葉にするべきだと考えるタイプなので…
「結婚しよう!って直訳して言ったよね?」
と妻に聞いてみたら…
「そうだっけ?」
へ?という顔をしている。
あれれ?言ったはずじゃなかったかな?
言った言わない論争が起きかけた。
伝えたはずだけどなあ、と思いつつ、
振り返った2021年の節分の日。
豆には脇目も振らず、
好きなお寿司屋さんで買ってきた、
本まぐろ恵方巻きを隣り合って
仲良くほおばったことを思い出して、
「MarryMe」という言葉の先は、
なんだか無性に幸福だなと思った。